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無意味の意味 - 『断片的なものの社会学』を読んで

家で偶然、映画の割引券を見つけた。1800円が1000円になる割引券で、これはお得だということで『虐殺器官』を観に行った。その日は家族が車を使っていたので、私は独りで自転車で出かけた。映画が終わると陽が落ちていて、風が冷たく突き刺さった。家に帰る…

戦争と科学のジレンマ - 『戦争の物理学』を読んで

第二次世界大戦で日本に原爆が投下されたとき、アインシュタインは悲痛の叫び声を上げたそうだ。自ら発見したエネルギーの法則で、大勢の人間が命を落とした。「E=mc²」の公式がなければ、原子力爆弾は存在しなかったかもしれない。アインシュタインの背中に…

映画『虐殺器官』と普遍文法

人間の脳にはあらかじめ文法が組み込まれている。幼児が言語を習得する際、単語を覚えるだけではコミュニケーションできない。脳に先天的な文法が備わっているからこそ、意味のある言葉になる。これは言語学者ノーム・チョムスキーが唱えた理論で、普遍文法…

名著『森田療法』など、講談社現代新書のKindle本がセール中

Kindleで講談社現代新書のフェアが開催されている。期間は3月9日までで、最大50%OFF。タイトル数はそれほど多くないが、その中に私がお勧めしてきた『森田療法』がある。森田療法 (講談社現代新書)作者: 岩井寛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/10/23メ…

『記憶力を強くする』など、講談社ブルーバックスがKindleでセール中

講談社がKindleでブルーバックスのセールを開催している。期間は3月2日までで、全点30%OFF。ざっとタイトルを見たが、一番のお勧めは『記憶力を強くする』だ。記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)作者: 池谷裕二出版社/…

期間限定セール『読みやすい文章を書くための技法』(Kindle本)

Kindleで出版した『読みやすい文章を書くための技法』のセールを実施する。 セール期間:2017年2月19日 〜 2月28日(10日間) セール価格:100円 (通常価格:250円)

スナップの名匠、写真家『エリオット・アーウィット』

写真は大きく分けて3つに分類できると思う。「綺麗な写真」「感じる写真」「面白い写真」だ。「綺麗な写真」は解像度が高い写真で、「感じる写真」は彩度や階調が印象的な写真。「面白い写真」は被写体の組み合わせに特徴がある写真で、今回紹介するエリオッ…

バイオソーシャル課 〜 犯罪防止の未来像

暴力の発生メカニズムが気になり関連書籍を何冊か読んだのだが、その中の一冊『暴力の解剖学』に、未来の理想像が描かれていた。暴力の兆候がある人に対して脳の画像を撮影したり脳波を測定し、バイオフィードバックを利用して攻撃性をコントロールするとい…

重力・素粒子・遺伝子が分かる10冊 ー 小説『グラビトン』の参考文献

昨年12月に小説『グラビトン』を出版した。伝えたかったのは科学の面白さと人間の可能性だった。読んだ方から「読み応えがあって面白かった」という嬉しいコメントを戴くこともあったが、なかには「よく分からなかった」という声もあった。私の技量に問題が…

世界との関わり方が変わる10冊 #2015

今年の夏頃からブログの書き方を変えた。以前は読んだ本を紹介することに重きを置いていたが、いまは本を媒介にして自分の感じたことを書こうとしている。すると自然に、記事のタイトルから本の題名が消えた。なぜ本を読むのか。それはひらめく準備をするた…

ポピュラーサイエンスの傑作10選

ポピュラーサイエンスをそのまま訳すと、大衆科学や通俗科学といった意味になる。書籍のジャンルのひとつで、難解な専門用語を使わず、平易な言葉で科学を解説した本を指す。印象に残るポピュラーサイエンスには物語性がある。イントロからエンディングまで…

村上春樹の書籍が電子化『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹のエッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』が電子化された。ウェブサイトの内容をまとめた『村上さんのところ』を別にすると、村上春樹の書籍が電子化されたのは初めてだ。本書は村上春樹のマラソンに対する思いが綴られた本だが、同時…

9つの成功法則『世界最強の商人』

2005年6月、膵臓癌の手術を終えたスティーブ・ジョブズは、スタフォード大学の卒業スピーチでこのような名言を残した。私は17の時、こんなような言葉をどこかで読みました。確かこうです。「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そう…

数学は発見か発明か『神は数学者か?』

ルネサンスの彫刻家ミケランジェロは、自分の彫刻は大理石のなかに初めからあって、それを掘り出しているだけだと考えていた。電気と磁気の統一理論を編み出したマクスウェルも、方程式を発見したのは自分の中の何かであって、自分ではないと告白している。…

科学エッセイの傑作『ご冗談でしょう、ファインマンさん』が電子書籍で登場

ファインマンの傑作エッセイ『ご冗談でしょう、ファインマンさん』が電子書籍で発売された。リチャード・P・ファインマンは1965年にノーベル賞を受賞した理論物理学者。素粒子の反応をダイアグラムで図式化したり、素粒子の動きを経路積分で計算して、量子電…

あなたを突き動かすもの『意識は傍観者である』

本を読んでゾクゾクしたのは久しぶりだ。『意識は傍観者である』は神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンによる脳科学の本。人は目や耳で情報をインプットして、口や手でアウトプットする。この一連の流れを自分でコントロールしていると錯覚するが、大部…

遺伝の仕組みを解き明かした『二重らせん』

ダーウィンは進化の仕組みを解き明かしたが、遺伝の仕組みについては誤った考え方をしていた。黄色の花と緑色の花を掛け合わせると黄緑色になると考えていたのだ。交配が進むにつれて特徴が薄くなると、環境に有利な形質を残すことはできない。その問題を解…

自然と数学の関係を紐解く『黄金比はすべてを美しくするか?』

ピラミッドの高さ、モナ・リザの構図、ハヤブサの飛行コース、宇宙の銀河など。黄金比は様々な場面で登場するが、その信憑性を検証しつつ、数学と自然の関係を見事に紐解いたのが、マリオ・リヴィオの『黄金比はすべてを美しくするか?』だ。黄金比を最初に…

一家に一冊『元素生活』

日常生活の中で元素を意識することはあまりない。元素を知らなくても呼吸はできるし、食べることもできるし恋もできる。だが、生きていく上で知っておいたほうがいいこともある。ベリリウムを加工するには防護服が必要だとか、テルルは名前が可愛いいわりに…

極上のサイエンスミステリー『偉大なる失敗』

今年は一般相対性理論の誕生100周年。書店を訪れるとアインシュタインの特集が目に付くが、中でもひときわ異彩を放っている表紙がある。アインシュタインが困った顔をしてたたずむ表紙だ。思わず手に取り読み進めると、これが極上のポピュラーサイエンス本だ…

未来ある子供に読ませたい『とんでもなく役に立つ数学』

タイトルは軽いが中身は濃い一冊。『とんでもなく役に立つ数学』は、東京大学の西成教授が高校生に講義した内容をまとめた本。ツールとしての数学の価値と、数学が好きになるための秘訣を丁寧に教えてくれる。例えば微分方程式で振動を制御し、ベイズ推定で…

『100の思考実験』で想像力を鍛える

理性を伴わない想像力はただの空想だが、想像力を伴わない理性は無味乾燥である。こんな書き出して始まる『100の思考実験』は、私たちの想像力を試す。著者はイギリスの哲学者ジュリアン・バジーニ。ウィトゲンシュタインの言語論から映画マトリックスのワン…

進化生物学の入門書として最適な『進化とは何か』

リチャード・ドーキンスの代表作といえば『利己的な遺伝子』だが、進化生物学のバックグラウンドがない状態で読むとなかなか理解できない。生物を遺伝子の乗り物として捉えた画期的な理論なのだが、比喩が巧みすぎて事実と憶測の区別がつかないのだ。『利己…

考え抜く力『種の起原』

科学関連の本を読んでいるとダーウィンの名前が頻繁に登場する。生物学に限らず、宇宙学や脳科学など様々な分野でダーウィンが引用される。なぜならダーウィンは、種が個々に創造されるという既成概念を打ち破り、自然選択という理論で生物の起源を解明した…

『直感を裏切る数学』は仕事や暮らしにも役立つ

先日紹介した『知のトップランナー』で、音楽家のブライアン・イーノが面白いコラムを書いていた。テーマは直感の限界。地球の円周より1メートル長いリボンを使って、地球の表面とリボンの間が等しくなるように地球を囲むと、地球の表面からリボンはどれだけ…

科学の名言集『知のトップランナー 149人の美しいセオリー』

私は仕事柄、ソフトウェアやハードウェアの仕様を短い文章でまとめる機会が多い。複雑に絡み合った条件を日本語で分かりやすく説明する。すべての条件を満たす短文が仕上がると嬉しい。試行錯誤を繰り返していると、カチッとはまる瞬間があるのだ。自然科学…

疑問を持つことの大切さ『知ろうとすること。』

私がいつも部下に教えているのは、自分で考えることの大切さだ。目の前で起きた問題に対して表面的な事象にとらわれず、深く追求して真実を解き明かす。物事に対して常に疑問を持つ。そんな想いが伝わった人はいい仕事をしてくれるし、伝わらない人はロボッ…

恋人を選ぶ基準『赤の女王 性とヒトの進化』

恋人や結婚相手を選ぶときの基準は、性格や容姿、収入や家柄など様々な要素があると思うが、遺伝子を意識する人はあまりいないはずだ。『赤の女王』の著者マット・リドレーは、突き詰めると遺伝子しかないと説く。人は強い生殖能力と素質のある遺伝子に惹か…

書評集の傑作『打ちのめされるようなすごい本』が電子書籍で登場

書評集の傑作『打ちのめされるようなすごい本』が電子書籍で登場した。著者の米原万里はゴルバチョフやエリツィンが指名したほどのロシア語通訳者。通訳者と同時に作家でもあり書評家でもあった。軽やかな文体と絶妙な皮肉。機知に富む表現と圧倒的な知性。…

義体化の夢『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』

サイボーグ昆虫は昆虫の脳で動くロボット。昆虫の頭部と腹部を切り離し、触覚と眼を残した頭部にモーターを繋げる。触覚で匂いを検知すると、脳が指令信号を発してモーターを動かす。攻殻機動隊というアニメに全身を義体化したサイボーグが登場するが、イメ…

限界を科学する本『人間はどこまで耐えられるのか』

人間の身体は極限の環境でどのような反応を起こすのだろう。生と死を分ける限界値はどこにあるのだろう。そんな疑問に答えてくれるのが『人間はどこまで耐えられるのか』だ。同じテーマのサブカルチャー本ならヴィレッジヴァンガードで見かけるが、本書のよ…

意識の終点『脳のなかの倫理』

※この物語は『脳のなかの倫理』を読んで書いたフィクションである。妻がアルツハイマー病になった。最初に異変を感じたのは五年前の夏だった。私がスイカを食べたいと言ったら丸ごと買ってきてくれたのだが、まだたくさん残っていたのに次の日も買ってきた。…

『人類が知っていることすべての短い歴史』 と日常の瑣末な出来事

ジェットコースターに乗っているような一日だった。朝起きて鏡の前でコンタクトをつけようとしたら、レンズが排水溝に落ちて流れていった。家を出ると高校生が乗る自転車に足を踏まれ、仕事では嫌なことがあり、夕方彼女にふられた。世の中のすべての不幸を…

動物行動学の名著『ソロモンの指環』が電子書籍に

コンラート・ローレンツの名著『ソロモンの指環』が電子書籍で発売された。ローレンツ博士は、ヒナが産まれて初めて見る動物を親だと誤認する「刷り込み」現象を発見した。それは動物との共同生活の賜物だった。誰もが見ていながら、誰も気づかなかったこと…

打ち砕かれる夢『リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実』

先日、国土交通相はリニア中央新幹線の工事計画を認可した。JR東海は来年から着工し、2027年の開通を目指す。完成すれば東京-名古屋間を40分で結ぶ夢の超特急となるが、『リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実』はその夢を完全に打ち砕く。環境面では、電磁…

鍵は細部に潜む『炭素文明論』

炭素と聞いて最初に思い浮かんだのは、鉛筆の芯でもバーベキューの木炭でもなく、炭素年代測定法だった。化石に残った炭素14を数えて、年代を特定する方法。カンブリア紀など数億年前まで遡ることができるのだから、そのスケールの大きさに圧倒される。生物…

不在を科学する本『無の科学』

人間の脳は活動していないときでも大量に酸素を消費している。休眠中はデフォルトネットワークと呼ばれる網の目が起動し、シナプスを構築しながら記憶を整理している。『無の科学』はそんな脳科学だけでなく、数学・宇宙学・物理学・生物学・医学など、様々…

科学エッセイの傑作『ご冗談でしょう、ファインマンさん』

こんなに面白い人が科学界にいたとは。リチャード・P・ファインマンは1965年にノーベル賞を受賞した理論物理学者。素粒子の反応をダイアグラムで図式化したり、素粒子の動きを経路積分で計算して、量子電磁力学の分野で大きな功績を残した。そんなファインマ…

ウイルスと遺伝子の関係を紐解く『破壊する創造者』

ウイルスと聞いて思い浮かべるのはエイズやエボラ出血熱、コレラやインフルエンザなどの恐ろしい病気だ。時には急激に、時にはゆっくりと、人間の身体に深刻なダメージを与える。だが、『破壊する創造者』の著者はウイルスが存在するからこそ生物は進化する…

時間の密度『ゾウの時間 ネズミの時間 ー サイズの生物学』

書店の新書コーナーに陳列されていた『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 』が気になったので読んだ。本書は、人間や動物をサイズの観点で比較し、生物に隠されているパターンを解き明かそうとする。こちらは発見されたパターンの一部。 動物の時間は…

世界との関わり方が変わる10冊 #2014

優れた本には、世界との関わり方を変える力がある。流行を追うのではなく、物事の本質をつかむことができる本。読み終えると世界の見方が変わり、目の前に道が開ける本。そんな本に出会うと、自分の可能性が広がることを感じる。今回は、数学・科学・デザイ…

『重力とは何か』が名著である理由

世の中には名著と言われる本が沢山あるが、誰かに勧められて読んでもピンとこないことがある。小説だったらオチが面白くなかったり、ビジネス書だったら中身がスカスカだったりと理由は様々だが、学術書の場合は難解さが理由の一つだ。難解だと感じる原因は…

本はすごい『昆虫はすごい』

光分社の新刊『昆虫はすごい』を読んだ。著者は九州大学総合研究博物館の丸山博士。博士の専門は昆虫の多様性だが、本書では昆虫全般の生物学的な面白さを分かりやすく語ってくれる。例えば、毒針の麻酔で獲物を長期保存するハチ、菌の畑を作って農業するキ…

明快な文章を書く技法『理科系の作文技術』

明快な文章とは切れ味のよい文章だ。要点が簡潔にまとめられ、研ぎ澄まされた文章。読み進めるだけでスッと頭に入ってくる文章。そんな文章を書くヒントが、理科系の論文にあった。『理科系の作文技術』は、木下是雄教授が若い研究者向けに書いた本。事実と…

動物を飼う前に読むべき本『ソロモンの指環』

動物行動学の理論を勉強するつもりで本書を購入したが、いい意味で期待を裏切られた。書かれていたのはコンラート・ローレンツ博士の日常生活だった。ガン、カラス、オウム、イヌ、ネコ、ハムスター、魚など、様々な動物と暮らす博士の、愛に満ちた観察日誌…

ユクスキュルの環世界と客観性

前回の記事で『哲子の部屋』を紹介したが、第2回の放送に登場した環世界という概念が気になったので、ユクスキュルの『生物から見た世界』を読んだ。環世界とは、それぞれの主体にとっての環境世界を指す。たとえば人間が森の中に入ると、そこには木があり土…

戦後100年を迎えた時『「大日本帝国」崩壊』

私は1970年代生まれなので、昭和天皇の記憶はおぼろげながら残っている。といっても若々しく活動する姿ではなく、年号が変わる直前のご老体の印象だ。そんな天皇が44歳の時、つまり1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、第二次世界大戦に終止符を打っ…

女性器の3Dデータが象徴するもの『マテリアライジング・デコーディング』

Official Site自身の女性器を3Dデータで配布し、わいせつ物頒布の容疑で作者が逮捕される事件があった。本人はあくまでアートだと主張しており、メディアは「わいせつ」と「芸術」の対比を軸に報じていたが、あれは単なる三面記事的なネタではなく、何かを象…

空想と現実『ガリレオの指』

科学にスキャンダルはつきものだ。1989年、フライシュマン教授とポンズ教授は常温での核融合に成功したと発表した。安価で簡易な次世代エネルギーの誕生が期待されたが、その後の追試験で全く再現しなかったため、至るところからバッシングを受けた。最近で…

何を信じるべきか『日本の植民地の真実』

台湾・朝鮮・満州は憎むべき日本の三大植民地と言われているが、植民地は本当に悪だったのだろうか。日本の軍隊は本当に婦女暴行や虐殺を行ったのだろうか。そんな疑問を元に大日本帝国を再評価したのが、黄文雄による『日本の植民地の真実』だ。台湾・朝鮮…