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戦争と科学のジレンマ - 『戦争の物理学』を読んで

第二次世界大戦で日本に原爆が投下されたとき、アインシュタインは悲痛の叫び声を上げたそうだ。自ら発見したエネルギーの法則で、大勢の人間が命を落とした。「E=mc²」の公式がなければ、原子力爆弾は存在しなかったかもしれない。アインシュタインの背中に…

バイオソーシャル課 〜 犯罪防止の未来像

暴力の発生メカニズムが気になり関連書籍を何冊か読んだのだが、その中の一冊『暴力の解剖学』に、未来の理想像が描かれていた。暴力の兆候がある人に対して脳の画像を撮影したり脳波を測定し、バイオフィードバックを利用して攻撃性をコントロールするとい…

数学は発見か発明か『神は数学者か?』

ルネサンスの彫刻家ミケランジェロは、自分の彫刻は大理石のなかに初めからあって、それを掘り出しているだけだと考えていた。電気と磁気の統一理論を編み出したマクスウェルも、方程式を発見したのは自分の中の何かであって、自分ではないと告白している。…

科学エッセイの傑作『ご冗談でしょう、ファインマンさん』が電子書籍で登場

ファインマンの傑作エッセイ『ご冗談でしょう、ファインマンさん』が電子書籍で発売された。リチャード・P・ファインマンは1965年にノーベル賞を受賞した理論物理学者。素粒子の反応をダイアグラムで図式化したり、素粒子の動きを経路積分で計算して、量子電…

あなたを突き動かすもの『意識は傍観者である』

本を読んでゾクゾクしたのは久しぶりだ。『意識は傍観者である』は神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンによる脳科学の本。人は目や耳で情報をインプットして、口や手でアウトプットする。この一連の流れを自分でコントロールしていると錯覚するが、大部…

遺伝の仕組みを解き明かした『二重らせん』

ダーウィンは進化の仕組みを解き明かしたが、遺伝の仕組みについては誤った考え方をしていた。黄色の花と緑色の花を掛け合わせると黄緑色になると考えていたのだ。交配が進むにつれて特徴が薄くなると、環境に有利な形質を残すことはできない。その問題を解…

自然と数学の関係を紐解く『黄金比はすべてを美しくするか?』

ピラミッドの高さ、モナ・リザの構図、ハヤブサの飛行コース、宇宙の銀河など。黄金比は様々な場面で登場するが、その信憑性を検証しつつ、数学と自然の関係を見事に紐解いたのが、マリオ・リヴィオの『黄金比はすべてを美しくするか?』だ。黄金比を最初に…

一家に一冊『元素生活』

日常生活の中で元素を意識することはあまりない。元素を知らなくても呼吸はできるし、食べることもできるし恋もできる。だが、生きていく上で知っておいたほうがいいこともある。ベリリウムを加工するには防護服が必要だとか、テルルは名前が可愛いいわりに…

極上のサイエンスミステリー『偉大なる失敗』

今年は一般相対性理論の誕生100周年。書店を訪れるとアインシュタインの特集が目に付くが、中でもひときわ異彩を放っている表紙がある。アインシュタインが困った顔をしてたたずむ表紙だ。思わず手に取り読み進めると、これが極上のポピュラーサイエンス本だ…

未来ある子供に読ませたい『とんでもなく役に立つ数学』

タイトルは軽いが中身は濃い一冊。『とんでもなく役に立つ数学』は、東京大学の西成教授が高校生に講義した内容をまとめた本。ツールとしての数学の価値と、数学が好きになるための秘訣を丁寧に教えてくれる。例えば微分方程式で振動を制御し、ベイズ推定で…

進化生物学の入門書として最適な『進化とは何か』

リチャード・ドーキンスの代表作といえば『利己的な遺伝子』だが、進化生物学のバックグラウンドがない状態で読むとなかなか理解できない。生物を遺伝子の乗り物として捉えた画期的な理論なのだが、比喩が巧みすぎて事実と憶測の区別がつかないのだ。『利己…

考え抜く力『種の起原』

科学関連の本を読んでいるとダーウィンの名前が頻繁に登場する。生物学に限らず、宇宙学や脳科学など様々な分野でダーウィンが引用される。なぜならダーウィンは、種が個々に創造されるという既成概念を打ち破り、自然選択という理論で生物の起源を解明した…

『直感を裏切る数学』は仕事や暮らしにも役立つ

先日紹介した『知のトップランナー』で、音楽家のブライアン・イーノが面白いコラムを書いていた。テーマは直感の限界。地球の円周より1メートル長いリボンを使って、地球の表面とリボンの間が等しくなるように地球を囲むと、地球の表面からリボンはどれだけ…

科学の名言集『知のトップランナー 149人の美しいセオリー』

私は仕事柄、ソフトウェアやハードウェアの仕様を短い文章でまとめる機会が多い。複雑に絡み合った条件を日本語で分かりやすく説明する。すべての条件を満たす短文が仕上がると嬉しい。試行錯誤を繰り返していると、カチッとはまる瞬間があるのだ。自然科学…

恋人を選ぶ基準『赤の女王 性とヒトの進化』

恋人や結婚相手を選ぶときの基準は、性格や容姿、収入や家柄など様々な要素があると思うが、遺伝子を意識する人はあまりいないはずだ。『赤の女王』の著者マット・リドレーは、突き詰めると遺伝子しかないと説く。人は強い生殖能力と素質のある遺伝子に惹か…

義体化の夢『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』

サイボーグ昆虫は昆虫の脳で動くロボット。昆虫の頭部と腹部を切り離し、触覚と眼を残した頭部にモーターを繋げる。触覚で匂いを検知すると、脳が指令信号を発してモーターを動かす。攻殻機動隊というアニメに全身を義体化したサイボーグが登場するが、イメ…

限界を科学する本『人間はどこまで耐えられるのか』

人間の身体は極限の環境でどのような反応を起こすのだろう。生と死を分ける限界値はどこにあるのだろう。そんな疑問に答えてくれるのが『人間はどこまで耐えられるのか』だ。同じテーマのサブカルチャー本ならヴィレッジヴァンガードで見かけるが、本書のよ…

意識の終点『脳のなかの倫理』

※この物語は『脳のなかの倫理』を読んで書いたフィクションである。妻がアルツハイマー病になった。最初に異変を感じたのは五年前の夏だった。私がスイカを食べたいと言ったら丸ごと買ってきてくれたのだが、まだたくさん残っていたのに次の日も買ってきた。…

『人類が知っていることすべての短い歴史』 と日常の瑣末な出来事

ジェットコースターに乗っているような一日だった。朝起きて鏡の前でコンタクトをつけようとしたら、レンズが排水溝に落ちて流れていった。家を出ると高校生が乗る自転車に足を踏まれ、仕事では嫌なことがあり、夕方彼女にふられた。世の中のすべての不幸を…

動物行動学の名著『ソロモンの指環』が電子書籍に

コンラート・ローレンツの名著『ソロモンの指環』が電子書籍で発売された。ローレンツ博士は、ヒナが産まれて初めて見る動物を親だと誤認する「刷り込み」現象を発見した。それは動物との共同生活の賜物だった。誰もが見ていながら、誰も気づかなかったこと…

鍵は細部に潜む『炭素文明論』

炭素と聞いて最初に思い浮かんだのは、鉛筆の芯でもバーベキューの木炭でもなく、炭素年代測定法だった。化石に残った炭素14を数えて、年代を特定する方法。カンブリア紀など数億年前まで遡ることができるのだから、そのスケールの大きさに圧倒される。生物…

不在を科学する本『無の科学』

人間の脳は活動していないときでも大量に酸素を消費している。休眠中はデフォルトネットワークと呼ばれる網の目が起動し、シナプスを構築しながら記憶を整理している。『無の科学』はそんな脳科学だけでなく、数学・宇宙学・物理学・生物学・医学など、様々…

科学エッセイの傑作『ご冗談でしょう、ファインマンさん』

こんなに面白い人が科学界にいたとは。リチャード・P・ファインマンは1965年にノーベル賞を受賞した理論物理学者。素粒子の反応をダイアグラムで図式化したり、素粒子の動きを経路積分で計算して、量子電磁力学の分野で大きな功績を残した。そんなファインマ…

ウイルスと遺伝子の関係を紐解く『破壊する創造者』

ウイルスと聞いて思い浮かべるのはエイズやエボラ出血熱、コレラやインフルエンザなどの恐ろしい病気だ。時には急激に、時にはゆっくりと、人間の身体に深刻なダメージを与える。だが、『破壊する創造者』の著者はウイルスが存在するからこそ生物は進化する…

時間の密度『ゾウの時間 ネズミの時間 ー サイズの生物学』

書店の新書コーナーに陳列されていた『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 』が気になったので読んだ。本書は、人間や動物をサイズの観点で比較し、生物に隠されているパターンを解き明かそうとする。こちらは発見されたパターンの一部。 動物の時間は…

『重力とは何か』が名著である理由

世の中には名著と言われる本が沢山あるが、誰かに勧められて読んでもピンとこないことがある。小説だったらオチが面白くなかったり、ビジネス書だったら中身がスカスカだったりと理由は様々だが、学術書の場合は難解さが理由の一つだ。難解だと感じる原因は…

本はすごい『昆虫はすごい』

光分社の新刊『昆虫はすごい』を読んだ。著者は九州大学総合研究博物館の丸山博士。博士の専門は昆虫の多様性だが、本書では昆虫全般の生物学的な面白さを分かりやすく語ってくれる。例えば、毒針の麻酔で獲物を長期保存するハチ、菌の畑を作って農業するキ…

動物を飼う前に読むべき本『ソロモンの指環』

動物行動学の理論を勉強するつもりで本書を購入したが、いい意味で期待を裏切られた。書かれていたのはコンラート・ローレンツ博士の日常生活だった。ガン、カラス、オウム、イヌ、ネコ、ハムスター、魚など、様々な動物と暮らす博士の、愛に満ちた観察日誌…

ユクスキュルの環世界と客観性

前回の記事で『哲子の部屋』を紹介したが、第2回の放送に登場した環世界という概念が気になったので、ユクスキュルの『生物から見た世界』を読んだ。環世界とは、それぞれの主体にとっての環境世界を指す。たとえば人間が森の中に入ると、そこには木があり土…

空想と現実『ガリレオの指』

科学にスキャンダルはつきものだ。1989年、フライシュマン教授とポンズ教授は常温での核融合に成功したと発表した。安価で簡易な次世代エネルギーの誕生が期待されたが、その後の追試験で全く再現しなかったため、至るところからバッシングを受けた。最近で…

虐待する親へ『愛を科学で測った男』

私は子供に対して少し神経質なのかもしれない。食べ物で遊んだり、宿題をやらなかったり、ゲームをやめなかったり。そんな時、どうしようもなく怒りが込み上げて、反射的に手が出ることがある。そして自分を責め、ひどく憂鬱になる。なぜならその暴力は子供…

人生の扉が開く『宇宙の扉をノックする』

宇宙について考えると不思議な感覚に包まれる。地上に立つ自分、空から見た自分、日本の地形、月から見た地球、太陽系の地球、無数の銀河、そして膨張する宇宙。人間は宇宙のスケールで見ると極めて小さい存在だ。なのに恋や仕事に一喜一憂し、人生を送って…

日本の未来やいかに『100年予測』

未来予測は面白い。いくら荒唐無稽で根拠のないものでも、当たるか外れるかは誰にも分からないからだ。まだ起きてない未来は誰に対しても平等に存在している。素人でも専門家でも予測である事に変わりはない。だが、専門家は当たる確率を引き上げる。ジョー…

名著『世界を変えた17の方程式』が電子書籍で登場

以前紹介した『世界を変えた17の方程式』が電子書籍になった。本書は昨年出版された数学者イアン・スチュアートの傑作。ピタゴラスの定理やアインシュタインの相対論など、方程式が世界をどのように変えたのか教えてくれる。方程式の意味を単純に解説するだ…

子供が文系を選ぶ前に読ませたい『面白くて眠れなくなる数学』

多くの高校では2年に上がるタイミングで文系と理系に別れるが、文系を選ぶ理由は消極的なものが多い。数学が苦手だからとか、なんとなくみんな文系だからとか。まれに女子が多いからという積極的な理由もあるが、往々にして文系は流されて選んでいるように思…

セックスを科学する本『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』

ジャレド・ダイアモンドはアメリカの進化生物学者で、『銃・病原菌・鉄』でピュリッツァー賞を受賞したサイエンスライターだ。フィールドワークをベースにしているため主張に説得力があり、語りかけるような文体と絶妙な比喩が読者を惹きつける。そんなジャ…

『フェルマーの最終定理』は知的な興奮を約束する

ある三乗数を二つの三乗数の和で表すこと、あるいは、ある四乗数を二つの四乗数の和で表すこと、および一般に、二乗よりも大きいべきの数を同じべきの二つの数の和で表すことは不可能である。私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎる…

花粉症や喘息など、アレルギー疾患に対する一つの解『寄生虫なき病』

幸いにも私は今まで花粉症や喘息に悩まされることはなかったが、食物に対するアレルギーはある。それは甲殻類アレルギーと呼ばれているもので、エビやカニを食べると唇や食道が赤く腫れて炎症を起こす。発症したのは大人になってからで、子供の頃はエビフラ…

薬にまつわる驚きの定説『遺伝子が明かす脳と心のからくり』

『教養のためのブックガイド』に登場する石浦章一教授の話が痛快で、試しに著書を読んでみたらやはり痛快で面白かった。『遺伝子が明かす脳と心のからくり 』は、東京大学教養学部の講義で石浦教授が語った内容をまとめた本。石浦教授の専門は分子生物学で、…

時計への情熱を描いた『経度への挑戦』

スマートフォンなどのGPSは、時計を利用して位置を特定する。地球の上空には原子時計を載せたGPS衛星が24基あり、GPS受信機はそのうち4基と通信する。その際の送信時間と受信時間の差をナノ単位で計測して、現在位置を割り出す。3000年に1秒しかずれない原子…

なぜポアンカレ予想が解けたのか『完全なる証明 ー 100万ドルを拒否した天才数学者』

2000年5月、アメリカのクレイ数学研究所は、数学における7つの未解決問題に100万ドルの懸賞金をかけた。7つの問題とは「ヤン=ミルズ方程式と質量ギャップ問題、リーマン予想、P≠NP予想、ナビエ=ストークス方程式の解の存在と滑らかさ、ホッジ予想、ポアンカ…

科学と文学のはざまで『虹の解体』

リチャード・ドーキンスの言葉は刺さる。専門の進化生物学だけでなく、物理学、数学、医学、統計学、心理学、芸術など、数多の知識をまとって振り下ろす言葉は、まるで刀のように鋭い。詩人のキーツはニュートンを批判した。ニュートンが虹を物理的に解体し…

同期現象の解明に挑む『SYNC ー なぜ自然はシンクロしたがるのか』

世界を記述する言語は数学である。これはガリレオの名言だが、確かに私たちの身の周りは方程式で満ちあふれている。先日も街を歩いている時、ふと、影の長さが気になった。太陽の位置が移動すると影の長さも変わるが、この長さは三角法で特定できるのだろう…

未来ある子供に読ませたい『教養としてのプログラミング講座』

2013年6月、安部総理は経済政策の一環として、義務教育の段階からプログラミング教育を推進すると発表した。既に2012年から中学校の科目の一部にプログラミングが取り入れられているが、義務教育への本格導入に向けて、2016年までに教育者のスキルを標準化す…

リバース・エボリューションの世界『恐竜再生』

Photo Link ハンスたちはまず、成長のある段階で尾の先端を切り取り、それをタングステンの細いワイヤーでもっと先の段階の尾につなぎ留め、尾の成長の初期に作用する成長因子が、ステージ29で出される終止シグナルを無視できるかどうかを確かめた... 〜 ジ…

世界は数学で満ちている『世界を変えた17の方程式』

数と数の関係性を明らかにして、数の意味を理解したり別の数を計算する。それが方程式の役割で、鍵となるのは = で表す等号だ。数学は記号を使った言語であり、すべて言葉に翻訳できる。方程式であれば「〜と〜は」という主語で始まり、「等しい」という述語…

『情報技術の人類史』を読まずして未来を生きるなかれ

Voyager Golden Record 紙にインクで記された八分音符や四分音符が音楽なのではない。音楽とは空気中に響く圧力波の連続でもない。レコード盤に刻まれた溝でも、CDに焼き付けられたくぼみでもない。聴き手の脳内に引き起こされるニューロンの交響でもない。…

飛行の謎を解き明かす『ハチは宇宙船の中でどう飛んだか』

photo credit: GATAG 1982年といえば、メキシコの大噴火で地球の平均気温が0.3度低下し、フォークランドでアルゼンチンとイギリスの紛争が勃発し、ソニーが世界で初めてCDプレーヤーを発売した年だが、スペースシャトルが初めて人を乗せて宇宙空間に到達した…

統計を学ぶべき10の理由『統計学が最強の学問である』

photo credit: SalFalko via photopin cc そうした彼の考え方を子どもの頃の私は尊敬していたが、その一方で「全力」と「最善」は異なるのではないかということも考え始めていた。たとえば、睡眠時間を削って目の前のことをこなし続けること、これは全力であ…

あなたの行動は見られている『世界史を動かすスパイ衛星』

情報を握っているものは世界を制することができる。相手がその情報を取られていることすら知らない場合は、いっそうその効果が大きい。スパイ衛星は、まさにそれを可能にする手段である。 - 江畑謙介 世界で初めて人工衛星を打ち上げたのはソ連だった。名前…