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神経質症、あるいは生き方に迷う人へ『森田療法』

Book Book-ノンフィクション




私の同僚に吃り(どもり)で悩んでいる人がいる。普段の会話はそれほど問題ないが、仕事で電話をしたり喋ったりすると緊張して吃音がひどくなる。本人も自覚していて治したいと思っているが、上手く喋ろうとすると余計にひどくなる。それはなぜか。吃りが自分だけの特別な病気だと思い、排除しようとするからだ。

人は誰でも緊張すれば言葉に詰まるし、震えたり、汗をかいたりする。そのような身体の反応は自然なことで、それに囚われず、会話であれば自分の意思を伝える事に集中する必要がある。それが理解できれば、精神的な問題で起こる吃音は緩和される。だが、口で説明してもなかなか伝わらない。そこで彼に一冊の本を勧めた。医学博士の岩井寛が書いた『森田療法』だ。

森田療法とは、1921年頃に森田正馬が創始した神経質症に対する精神療法。西欧の心理療法は神経症者の不安や葛藤を分析し、異物として除去しようとする傾向があるが、森田療法は不安や葛藤を「あるがまま」の姿で認めて、自己実現するために「目的本位」の行動に移す事を目標にしている。


本の目次
「最後の自由」ー 追悼・岩井寛先生 ー 松岡正剛
はじめに ー「森田療法」とは何か
1. 森田療法の基礎理論
2. 神経質(症)のメカニズム
3. 神経質(症)の諸症状
4. 神経質(症)の治し方
5. 日常にいかす森田療法
おわりに ー 生と死を見つめて


赤面恐怖、体臭恐怖、疾病恐怖、不潔恐怖、雑念恐怖、過失恐怖、書痙、心悸亢進発作、卒倒恐怖、眩暈発作、腹痛発作など、神経質症には様々な症例がある。大勢の人前で喋る時、緊張して足が震える経験は誰にでもあると思うが、それを「あるがまま」受け入れ、聴衆に意志を伝える事に集中すれば目的を達成できる。私自身、学生時代に父親から本書を勧められ、様々な場面で救われた。

著者の岩井博士は癌の影響で下半身が麻痺し、片耳が聾になり、両目の視力を失った状態で本書を口述筆記した。生きる意味を見失いそうになってもなお、将来に対する不安を「あるがまま」に受け止め、人間としての責任を果たそうとした。神経質症で悩んでいる人に限らず、生き方に迷っている人にも価値がある素晴らしい本だ。

岩井寛 『森田療法』(講談社現代新書)Amazon / 楽天


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