『万葉集』に見るネットの縮図



20130720171943


決定版・日本史』を読んでいたら面白い記述が出てきた。

八世紀に成立した『万葉集』には身分に関係なく、天皇から乞食や遊女に至るまでの歌が載せられている。まさに国民的歌集と呼ぶべきものである。


身分に関係ない歌集というくだりで、インターネットの世界が思い浮かんだ。ブログ、Twitter、Facebook、政治家、芸能人、一般人。ネットは誰でもテキストをアップできるし、誰でも見る事ができる。

一方で、乞食や遊女の歌が天皇と同じ歌集に載るとはどういうことなのかと不思議になるが、これは当時の日本人の考え方を見る一つの鍵になる…
日本の場合は変わっていて「和歌の前に平等」という思想があったようである。歌が上手であれば天皇と同じ本の中に入れてもらえるのは、この「和歌の前に平等」という思想を如実に表しているように思われる。


万葉集とは「万の言の葉」。言葉を上手く使えば、人の心を動かす事ができる。人はネットの前では平等で、言葉に魅力があると、ブログなら読者が増え、Twitterならフォロワーが増える。

身分の低い人や罪人の場合は「読み人知らず」として勅撰集の中に入れるようになった。ただし「読み人知らず」とされても、だいたいは誰かわかるようなものであった。


読み人知らずとは、匿名の投稿。はてなダイアリーにも匿名があるし、Twitterも基本的には匿名だ。



万葉集は7世紀から8世紀にかけて編まれた。誰が編集したのかは定かになっていないが、万葉集は言わば最古の「まとめ記事」。名言集やTips集など、まとめ記事は今の時代でも重宝されている。


自然に感動し、

石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも(いはばしる たるみのうえの さわらびの もえいずるはるに なりにけるかも)- 志貴皇子


恋愛をして、

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る(あかねさす むらさきのゆき しめのゆき のもりはみずや きみがそでふる)- 額田王


子供を大事にする。

銀も 金も玉も なにせむに 優れる宝 子に及かめやも(しろがねも くがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも)- 山上憶良


科学技術が進歩して生活様式は随分変わったはずだが、人間の本質的な部分は、今も昔もそんなに変わっていない。万葉集からネットへ。千年以上も前の人が、何を考え、何に感動して生きていたのか想像すると楽しい。

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