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あなたの行動は見られている『世界史を動かすスパイ衛星』

Book Book-サイエンス

20140124220732


情報を握っているものは世界を制することができる。相手がその情報を取られていることすら知らない場合は、いっそうその効果が大きい。スパイ衛星は、まさにそれを可能にする手段である。 - 江畑謙介


世界で初めて人工衛星を打ち上げたのはソ連だった。名前はスプートニク号で、村上春樹の小説タイトルにも登場するあのスプートニクだ。翌1958年には米国もエクスプローラ号を打ち上げ、人類の宇宙活動は急速に展開した。衛星の目的は他国の軍事監視で、最初はフィルムカメラでミサイル基地などを撮影した。撮影後はフィルムが入ったカプセルを地球に投下し、空軍や海軍がビーコンを頼りに回収した。

1980年代に入るとカメラのデジタル化が進み、より鮮明な画像が入手できるようになった。1991年の湾岸戦争は世界初の宇宙戦争と呼ばれている。米国の偵察衛星による写真が、サウジアラビアに多国籍軍の受け入れを決意させたと言われているからだ。イスラム教の聖地メッカに進駐した米軍と、それが許せなかったウサマ・ビンラディン。同時多発テロのきっかけが米国のスパイ衛星にあるとは、なんとも皮肉な話だ。

衛星は、地球の重力で下に引っ張られる力と、遠心力で上に飛び出そうとする力を釣り合わせて高度を維持する。赤道上の高度約36,000kmを周る衛星は、周期が地球の自転と一致し、地上に対して静止するように位置するため静止衛星と呼ばれる。近年では、静止衛星と地球をパイプで結ぶ宇宙エレベーターの研究も進んでいる。

1991年にソ連が崩壊して以降、衛星の開発は米国が主導権を握った。これまでに打ち上げられた人工衛星は約7000基。今も約3000基の衛星が地球の軌道を回っている。最初は軍事目的だった衛星も、気象観測、衛星放送、GPSなど、私たちの身近で利用されるようになった。リアルタイムでの動画送信技術も発達し、車の動きまで分かるようになった。

こちらは東京を含む実際の映像。

1989年の天安門事件では、騒乱の範囲や群衆の動き、軍隊や治安部隊の行動が撮影された。1986年のチェルノブイリ原発事故では、爆発の惨劇が撮影された。吹き飛ばされた屋根、押し潰された壁、数キロ離れた場所でサッカーを楽しむ人々など。福島の原発事故も衛星から撮影されていたのだろう。

米国は世界を監視している。Google Earthは米国内の機密性が高い建造物にモザイクをかけている。ウサマ・ビンラディンは潜伏先の庭で体を伸ばすところを撮影された。宇宙を見上げるとカメラがこちらを向いている。なんとも空恐ろしい世界だ。

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