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イスラム世界を学ぶ教科書として - 「テロリスト」がアメリカを憎む理由

Book Book-ノンフィクション



20140102110026


ウサマ・ビンラディンの殺害から3年近く経ち、ようやく米軍は2014年にアフガニスタンから撤退する。2001年から始まったアフガニスタン戦争の死者は3万人を超えた。なぜアメリカはここまでして他国に干渉するのだろう。なぜテロリストはこれほどアメリカを憎むのだろう。その背景を知っている日本人はどれぐらいいるのだろう。

ウサマ・ビンラディンは、アメリカの同時多発テロ後、次のように宣戦布告した。

イスラム世界は、80年以上にわたって、屈辱と不名誉に苦しんできた…… 80年たって、剣がアメリカに打ち下ろされたとき、偽善がその頭を高くもたげ、モスレムの血と名誉、そして神聖さをもてあそんできた殺人者たちを憐れんだ。

ここで言われている80年前に、イスラム混迷の発端がある。


1906年、スパイ嫌疑をかけられていたユダヤ系のフランス軍人ドレフュスが無罪を勝ち取った。これをきっかけに、ヨーロッパ各地で差別を受けていたユダヤ人は団結し、パレスチナに国を作ろうとする。

パレスチナのエルサレムはイスラム教、ユダヤ教、キリスト教の聖地であり、もともとはイスラム教のアラブ人が暮らしていた。アラブ人にとって、ユダヤ人による建国の動きは降ってわいたような悲劇だった。

それから半世紀後、第二次世界大戦で600万人のユダヤ人がナチス・ドイツに虐殺される。ユダヤ人はパレスチナに大挙し押し寄せ、難を逃れるためにアメリカへ亡命した。そして1948年、虐殺に同情した世界はユダヤ人のイスラエル建国を許す。

それに対し、エジプト、ヨルダン、シリア、イラクなどは、アラブ民族主義を背景にイスラエルへ進軍した。だが、イスラエルはアメリカ軍の支援を受けていたため強力だった。そこでパレスチナのアラブ人は、アラファト議長を中心に国のない政府・PLO(パレスチナ解放機構)を発足する。


ウサマ・ビンラディンはサウジアラビア生まれのアラブ人で、イスラエルをバックアップするアメリカに対して憎しみを持っていた。さらに、1991年の湾岸戦争でアメリカ軍がサウジアラビアに進駐した事が、同時多発テロに結びつく最大の原因となる。

米軍はイスラム教の聖地であるサウジアラビアのメッカに進駐した。これは、キリスト教であればバチカンにイスラム教徒の軍隊が駐留したり、日本の仏教であれば高野山や比叡山に米軍が駐留する事と同じだ。例えば、京都の清水寺や東京の皇居に他国軍が居る事を想像すると、その違和感や怒りも理解できるだろう。

物事は両面で見る必要がある。ウサマ・ビンラディンは、アラファトやマンデラのような民族自決主義者ではなく、過激な原理主義者だ。あの同時多発テロは許されるべきものではない。だが、テロリストはすべて「破壊の戦士」でなく、立場が違えば「自由の戦士」になる事を私たちは理解しなければならない。

『「テロリスト」がアメリカを憎む理由』は、そんなイスラム世界を学ぶ絶好の一冊となる。

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