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比重

飛行機公園


半年ほど前の話になるが、北海道の美瑛にあった哲学の木が倒された

哲学の木は丘の上の畑に立っていた一本のポプラの木。斜面に対して逆向きに傾いており、哲学的な趣きがあったためそう名付けられた。

ただ、ポプラの木の老化に加え、畑に踏み入るなど撮影者のマナーの悪さに耐えかねて、オーナーが撤去を決断したそうだ。

畑に入る行為は、車ならクラクションを鳴らして交差点に進入する、電車なら混んでいる車内で足を投げ出して座る。そんな無神経さと同じで、他人に配慮できない人間がする。

ただ、私も八百津町の棚田を見に行った時に感じたことがあった。現地で農作業をしている人にとって、撮影者は異質な存在だ。マナーを守っていたとしても、目障りだと感じる人もいるだろう。

では、それが分かっているのになぜ私は写真を撮るのか。

理由は二つあるように思う。一つは他人に認められたいという欲求。もう一つは他人に感動を伝えたいという欲求。

私はこんな場所を知っている。こんな機材を持っている。こんなテクニックがある。こんなセンスがある。だから見て欲しい。これらは前者の欲求だ。

それに対し、こんなに綺麗な景色があった。こんなに驚く瞬間があった。こんなに楽しいシーンがあった。だから伝えたい。これらが後者の欲求だ。

この二つは、比重は変わっても片方だけになることはない。ただ、前者の欲求が極端に強くなると畑に踏み入るように思う。

私は後者の比重を大きくしたい。前者の欲求が減った時、いい写真が撮れるようになる。そんな気がするのだ。

Canon EOS 6D / SIGMA 50mm F1.4