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映画『カティンの森』の衝撃

 映画『カティンの森』が衝撃的だった。

 第二次世界大戦で、ソ連軍は1万人を超えるポーランド人を虐殺した。虐殺の現場はカティンから離れていたが、覚えやすい地名でソ連の犯罪を流布しようというドイツの思惑により、「カティンの森事件」と名付けられた。

 映画の物語は、一人のポーランド将校とその妻が主役となって進む。他のポーランド軍人や親兄弟の話もパラレルに進行するのだが、シリアスなストーリーに伏線を絡め、最後にきっちりまとめる脚本は見事だった。

 ノスタルジックな映像も、観る者を引きつける。撮影監督は『戦場のピアニスト』と同じポーランド出身のパヴェウ・エデルマン。FUJIFILMのカメラが好きな私は、ネガフィルムの色調を再現する「PRO Neg. Std」が思い浮かんだ。彩度が低く、含蓄のある映像だ。

 この映画の衝撃はラストで訪れる。サスペンス映画のようなどんでん返しがあるわけではないが、最後で激しく胸を衝かれる。誰しもが憤り、誰しもが良心の存在を疑う。そんな事実に直面する。

 映画『カティンの森』は監督のアンジェイ・ワイダが80歳のときに取り組んだ作品。監督の父親も虐殺事件の犠牲者だったそうだ。監督は余生わずかな歳となり、事件を後世に伝える義務感に駆られたのではないか。

 戦犯はソ連だけではない。日本にも虐殺の歴史があるが、その事実を理解している人は少ない。あと十数年で日本から戦争を体験した人が消える。虐殺の衝撃は人ではなく、映画が語り続けるだろう。


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カティンの森 (字幕版)

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